Baldor Electric社: より少ないリソースで より多くの成果を出す

Baldor Electric社は、SUSE® Linux Enterprise Server for z Systemsを実行するIBM System z上の仮想マシンにワークロードを移行することで、応答時間、アップタイム、および生産性の向上を実現しながら、ITコストをセールスの2%から1%未満 にまで削減しました。

概要

Baldor Electric Companyは、産業用電動機、動力伝達装置、駆動機構、発電設備について、顧客にとって最良の販売会社であり、設計者であり、製造者であることを使命 としています。アーカンソー州フォートスミスにある本社から、世界中のBaldor社製品を置いている営業所/倉庫をサポートし、70カ国以上の流通業者 やOEMに販売しています。同社の製品は、北米の50の営業所/倉庫および国際市場向けの26の営業所で販売されています。生産は、米国、カナダ、英国、 メキシコ、中国にある26の工場で行われています。

課題

Baldor社の使命遂行は、効果を上げました。高品質製品と顧客への対応により、2004年までにビジネス要求は高まりました。特にセールスは、 毎年8~10%の割合で伸び、その結果、既存の製造拠点の拡大や統合による新たな製造拠点の開設が進みました。しかし、この成長に伴いITの問題が生じ、 事業に影響を与えるようになりました。

Baldor社では当時、SAP Business Suiteなど、数多くのミッションクリティカルなアプリケーションが、AIXノード上のIBM System pで実行されていました。このノードは、1GBファイバでDB2を実行するIBM System zに接続されていました。「応答時間に問題はなかったものの、何か高速化につながるソリューションを導入したいと考えていました」とBaldor社の大規 模システム担当マネージャ、Eric Breuer氏は言います。接続速度高速化のニーズに加え、同社ではコスト上昇とシステムの複雑化という問題を抱えていました。さらに、アップグレードや 管理に関する問題もありました。

単純にストレージやメモリを追加するだけでは、 コストがかさみ、多くの時間を割くことになります。また、IT機器の占有面積、電力および冷却コストが増大していることも問題であり、制御と削減の必要が ありました。その上、同社は顧客と従業員に対して1日24時間/週7日間の質の高いサービス提供を確保し、業務中断のリスクを低減する必要もありました。 当時、年に5~8回のシステム停止が起き、何十万ドルものコストがかかっていました。

転機は2005 年から2006 年にかけてやってきました。しかし、Baldor 社はより少ないリソースでより多くの成果を出すこと、すなわち、ビジネス要求の高まりに合ったソリューションを見つけられたのでしょうか。そのソリュー ションにより、パフォーマンスを向上させ、可用性を改善し、同時に、コストを削減し、IT 占有面積を減らし、管理を簡素化するという条件を満たす必要がありました。

当社のPOC (提案検証)で、IBM社もSAP社もSUSE Enterprise Linux Server for z Systemsを勧めてきました

SUSEソリューション

ソリューションの一部は既に社内にありました。Baldor 社は、1990 年代からDB2 環境を実行するためにIBM Z シリーズを利用していたのです。そこで、IBM z Systems を新たなソリューションの基盤として用いることにしました。これにより、高い可用性とパフォーマンスを実現し、顧客に常時サービスを提供することが可能に なりました。

また、Baldor 社は(z/VM を用いた) 仮想化とサーバ統合にも関心があり、IT のコストと占有面積、電力および冷却コストを削減したいと考えていました。そのため、IBM テクノロジであるHiperSockets もBaldor 社にとってz Systemsの重要な機能となりました。HiperSockets は、ハイパーバイザによりパーティション間の高速通信を実現するもので、パフォーマンスの向上につながります。つまり、z Systems の発展的利用により、同社の既存ハードウェアを統合して活用することでコストを削減し、同時に高速化も実現できたのです。

SUSE LINUX ENTERPRISE SERVER FOR SYSTEM Z の選択

しかし、まだ問題が1 つ残っていました。どのOSが、信頼性、高可用性、高速パフォーマンスという条件を満たすのかということです。候補に挙がったのは、SUSE Linux Enterprise Server for Systemz のみでした。

「2006 年の当社のPOC ( 提案検証) で、IBM社もSAP 社もSUSE Enterprise Linux Server for z Systems を勧めてきました。SUSE はIBM社とSAP 社と緊密に連携しており、SUSE Linux Enterprise Server for z Systems はz/VM やSAP 向けに最適化されています」とEric Breuer 氏は述べています。「ですから、その勧めに従うことにしました」

また、Baldor 社にとって、SUSE Linux Enterprise Server for z Systems and LinuxONE には、UNIXやMicrosoft Windows、その他のLinux ディストリビューションに優る利点がありました。ITと管理を簡素化する上で、同社はプラットフォームを標準化して、あらゆるハードウェアで利用したいと 考えていたからです。SUSE Linux Enterprise は、市場で最高レベルの相互運用性を備えたLinux OSでした。同時に、最高レベルのパフォーマンスと可用性を提供し、SAP 認定を受けていることから、Baldor 社の要件を満たしていました。

「さらに」とBreuer 氏は続けます。「z Systems上でSUSE Linux Enterprise Server を実行することで、TCO の最適化が図れました。特に、IBM の低価格IFL (Integrated Facility for Linux: Linux ワークロード専用のプロセッサ)とSUSE のIFL 向け特別ボリューム価格の活用により大きな効果が得られました」

提案検証

Baldor 社は、POC 用にSUSE Linux Enterprise Server for z SystemsをLPAR (論理パーティション) にインストールしました。これは、コンピュータリソースのサブセットであり、別個のコンピュータとして仮想化されています。当初、同社の担当チームは LPAR 導入所要時間とHiperSockets の設定に不安を感じていました。しかし、サーバとSUSE Linux Enterprise Server をLPAR にセットアップし稼働させるまでにかかったのは、わずか2日でした。その後、ほんの数日でサーバをSAP 環境のログオングループに設定できました。Breuer 氏は次のように話します。「綿密な計画に従って作業するよりも、「まず、やってみよう」という姿勢で臨みました。おかげで、テストソリューションを迅速に 実装して調整できました」

それが功を奏し、POC は無事に完了しました。次にBaldor 社は、SUSE Linux Enterprise Server for z Systems を実行するLPAR にバッチ処理をマイグレートし、実行時間を36% 高速化できました。このサーバの「パワーユーザ」も、応答時間が改善したと語っています。最終的に、Baldor 社は、IBM z Systems とSUSE Linux Enterprise Server for z Systems and LinuxONE を導入することに決めました。さらに、さまざまなオンラインとクラスルーム形式のSUSE Linux Enterpriseトレーニングも選択しました。

マイグレーション、統合、仮想化

最初にLPARを実装して間もなく、Baldor 社は、最適化パフォーマンスなどの機能(SUSE Linux Enterprise Server for z Systems and LinuxONE のz/VM向け機能) を利用するためにz/VM を発注しました。そして、仮想サーバを作成し、SAP アプリケーションをすべてSUSE Linux Enterprise Server を実行するz Systems にマイグレートしました。Baldor 社のLinux 管理者はクローニングプロセスを用いLinux のインスタンスを30 分で複製できました。全体としてはわずか半年で、すべてのSAP アプリケーションサーバを、System p のAIX からz Systems のSUSE Linux Enterprise Server にマイグレートできました。

フェールオーバー機能を備えたSUSE Linux Enterprise Server for z Systems and LinuxONE を実行することで、アップタイムが大幅に改善され、仮想化によりBaldor 社のデータセンターは統合を果たし、6,000 平方フィートから900 平方フィートに面積を縮小できました。また、SUSE Linux Enterprise Server with Priority Support for SAP を購入した結果、SUSE の全サーバで一括したサポートが受けられるようになり、サービスが簡素化されました。

さらに、パフォーマンスも向上しました。SUSE Linux Enterprise Server for z Systems and LinuxONE でSAP のパフォーマンスが最適化されたことで、Baldor 社は、社内ユーザと顧客からの1 日に100 万を超えるSAP のトランザクションを処理することが可能になりました。この処理の平均応答時間は1 秒未満です。SUSE Linux Enterprise Server イメージ間の仮想ネットワークにHiperSockets を用いることは、高速化と高可用性の実現にも役立っています。「この1つのアイテムにより、エンドユーザ応答時間が大幅に改善しました」とBreuer 氏は述べます。

Breuer 氏によれば、「SUSE Linux Enterprise Server for z Systems and LinuxONE によって、高い信頼性を保ちながら、SAP を確実に実装できました」ということなのです。

現在のBALDOR 社の環境

大規模なSAP の実装に成功し、さらには、SUSE Linux Enterprise の知識も豊富に得たBaldor 社は、AIX/p-series 環境全体と多数のIntel ベースワークロードを、メインフレームとSUSE Linux Enterprise Server for z Systems にマイグレートし、仮想化しました。

現在ではSUSE Linux Enterprise Server for z Systems and LinuxONE 11 Service Pack 2 を実行するBaldor 社のワークロードの90% が、ABP およびJ2EE のサーバによる混合環境のSAP アプリケーションサーバです。残りは、Web サーバとその他のサポートサーバとなっています。

Baldor 社全体では、z Systems 機が2 台あります。1 台のIBM z196 (2817/M32) は、セントラルプロセッサ(CP) を6 台、IFL を16 台、zIIP (z Integrated Information Processor) を3 台、さらにICF (Internal Coupling Facility) を2台稼働させています。このSystem z サーバ上で稼働しているのは、SAP 運用環境用z/VM LPAR です ( 約30 台のLinux サーバで、全16台のIFL と300GB 割り当てのメインストレージを、100GB 割り当てのストレージを用いる単一サーバと共有)。また、このz Systems には、ネイティブLPAR モードで

稼働しているSUSE Linux Enterprise Server for System zのインスタンスが2つあります。1 つは、NFSファイルサーバとして使われ、もう1 つは、SAP バッチ運用サーバとして使われています。Baldor 社は、これらの2 つのインスタンスを利用し、週末のz/VM保守実行時にSAP バッチ運用環境を実行できるようにしています。

2台目のz Systems機はIBM EC12 (2827H43)で、4 台のCP、12 台のIFL、2 台のzIIP、2 台のICF で運用されています。このEC12 は、z196上で稼働する運用環境の中央インスタンスを含むLPAR モードのSUSE Linux Enterprise Server を実行しています。また、約55 台のSAP アプリケーションサーバで構成される追加z/VM LPARで、サンドボックス/開発/テストのワークロードもすべて実行しています。EC12 は2013年1 月に導入されたばかりなので、システムリソースのさらなる活用を目指し、ワークロードバランスが再調整される予定です。Webサーバなども含め、SUSE Linux Enterprise ベースのサーバはすべて、HiperSockets を介し、z/OS のDB2 データベースに接続されます。DB2 データベースはすべて、CEC (Central Electronic Complex)間の完全データ共有機能を利用しています。

また、Baldor 社はディザスタリカバリ(DR) に真剣に取り組んでおり 、DR テストを年に3 回実施しています。運用環境のSUSE Linux Enterprise Server for z Systemsのインスタンスは復元され、復元済みDB2 に接続されます。復元は、z/VM DASDファームを収容しているCKDフォーマットディスクとSUSE LPAR Mode サーバが配置されているディスクの「フルボリュームダンプ」から実行されます。ボリュームの「ダンプ」が実行されるのは、SAPとSUSE Linux Enterprise Serverが稼働中ですが、使用率の低い時間帯です。Baldor 社は、SUSE Linux Enterprise Server for z Systems の全インスタンスのバックアップをINNOVATION Data Processing 社のFDR/UPSTREAM で行っています。FDR/UPSTREAM は、主にBaldor 社データセンター内で単独のファイルの復元に用いますが、フルボリュームダンプに問題が生じた場合は、FDR バックアップをDRに使うこともできます。すべてのデータ(SUSE Linux Enterprise Server、DB2、z/OS) は、IBM Virtual Tape systemを重複排除機能と併用し、Baldor 社内のIBM Business Continuity and Resiliency Services にリアルタイムで複製されます。データセンター内で物理テープが使われることはありません。Baldor 社のSAP 運用環境での目標復旧時間は6 時間です。

結果

Eric Breuer 氏はBaldor 社の経験を次のようにまとめています。「SUSE には、最良のサポートを組み合わせた最高のLinux ディストリビューションがあります。SUSEサーバの信頼性、パフォーマンス、可用性は『最上級』です」。同社がWindows で経験したこととは異なり、Linux サーバは保守と人的ミスの場合を除き、ダウンすることはありません。「SUSE プラットフォームの可用性は、99.999% を超えています」とBreuer 氏は言います。この新たな環境によって、同社では計画ダウンタイムを大幅に削減できました。

SUSE Linux Enterprise Server for z Systems and LinuxONE を実行するIBM z Systems 環境全体の導入において、Baldor 社とSUSE およびIBM 社との連携関係は良好に続いています。マイグレーションやアップグレードは円滑に進み、サポートコールには、すべてタイムリーな回答が得られ、解決策が示 されています。

また、Baldor 社は、このソリューションを常に最新バージョンに更新して、Service Pack 2 に備わった追加メモリの動的ロードのようなパフォーマンス機能を利用しています。プラットフォーム管理は単純明快で複雑なことはありません。必要な管理者 は、z/VM とSUSE Linux Enterprise Server for z Systems and LinuxONE でわずか1人ずつです。このシステムはセキュリティにも優れており、ウィルス侵入や悪意のあるハッキングに遭うことはありません。Breuer 氏は、「当社にとってセキュリティとは、z Systems でLinux を実行することに尽きます」と語ります。またスケーラビリティについては、「もう考える必要がなくなりました。サーバが必要なら、リソースはもうあるので すから」と述べています。

SUSE のソリューションによってもたらされた効果を具体的な数字で表すと、次のようになります。

  • ハードウェアとソフトウェアのコストを30%

    削減

  • 管理コストを50% 削減
  • サーバの90% を統合( 占有面積の縮小と、電

    力および冷却コストの削減を実現)

  • アップタイムを90% 改善( ディザスタリカバ

    リによる損害を軽減)

  • 従業員の生産性が34% 向上

「コンピュータ関連の総経費は、以前はセールスの2% 以上を占めていましたが、今では1% 未満になりました。おかげで、競争力を維持し、24 時間365 日動き続けている現代社会においてユーザとお客様をサポートできます」とBreuer 氏は述べます。「メインフレームでのSUSE Linux Enterprise Server for z Systems の実行を今後の計画にも組み込む理由は、そこにあります。引き続きこのソリューションを新規プロジェクトのプラットフォームとして利用して、事業を拡大 し、当社の親会社であるABB 社のアプリケーションをさらに多くホスティングする予定です。IBM z Systems とSUSE Linux Enterprise Server for z Systems を併用することで、ユーザとお客様に当社が提供する優れた価値を享受してもらえるのですから」