大阪で2018年に設立されたメタデータラボ株式会社は、ゲーミングPC事業から成長を遂げ、AI開発およびインフラストラクチャ分野のイノベーターとなりました。オンラインゲーム向けの高性能PCの製造・販売に加え、同社はAIモデルの開発やトレーニングを含むAI開発ライフサイクル全体をサポートするよう最適化された、GPU搭載サーバーも提供しています。
同社は、VTuber(バーチャルビデオストリーマー)、オタク(アニメ・漫画・ビデオゲーム文化の熱心なファン)、そしてAIエンジニアリングのコミュニティに深く根ざしてます。
概要
メタデータラボ社は、クリエイターを支援するために設計されたAI開発プラットフォーム「HIMIKO」を開発することで、日本全国におけるAIの利用拡大を目指しています。
HIMIKOを効果的に構築し拡張するため、メタデータラボ社はクラウドプロバイダーであるIDCフロンティア社が提供する「IDCFクラウド コンテナ」とデータセンターサービス上にプラットフォームを展開しました。
IDCFクラウド コンテナは、KubernetesとSUSE Rancher PrimeおよびSUSEのテクニカルサポートを組み合わせることで、メタデータラボ社が主要なコンテナ管理業務を迅速化・自動化し、コストを削減するとともに、「HIMIKO」の市場投入までの時間を短縮することを可能にしています。
コンテナ技術を活用したAIのスケーリング
メタデータラボは、壮大なビジョンを掲げてAIへの取り組みを開始しました。それは、日本のクリエイター専用に設計された、全く新しいAI向けクラウドサービスを創り出すことです。「HIMIKO」と名付けられたこの新しいプラットフォームは、クリエイターが高度なAI機能に費用対効果の高い方法でアクセスし、アイデアを実現できるよう支援することを目指しています。
同社は、クライアント向けに安全な環境を迅速かつ効率的にプロビジョニングおよび管理することを目指し、「HIMIKO」をコンテナ化されたインフラストラクチャ上に構築することを計画しました。
メタデータラボ株式会社 代表取締役 本間裕二氏は次のように述べています。「当初、HIMIKOの各クライアントに個別の物理サーバーをプロビジョニングすることを検討しました。しかし、このアプローチではCPUやGPUの未使用リソースが大量に発生するため、最適ではないとすぐに気づきました。コンテナを利用することで、単一のコンピューティングリソースプールを複数のクライアント環境で安全かつ効率的に共有でき、コストと複雑性を削減できます」
メタデータラボはAIというミッションに一点集中することを目指していましたが、オンプレミス環境で素のKubernetes(vanilla Kubernetes)インフラを自社で管理することは、少数精鋭である同社のチームを本来の開発業務から大きく逸らすことになると認識していました。この重い運用負荷を回避するため、同社はより効果的なアプローチを模索しました。
「Rancher Primeによって、当社のすべてのコンテナ化環境を単一のコントロールポイントからオーケストレーションでき、これにより多大な時間と労力を節約できています」
SUSE Rancher Primeを選んだ理由
「HIMIKO」の基盤を構築するため、メタデータラボ社はクラウドに着目しました。日本国内の中規模およびハイパースケーラーのクラウドプロバイダーでは、電力消費やバックグラウンド処理に多くの制限が課されていたことから、同社はIDCフロンティアを選択しました。
ソフトバンクのグループ企業であるIDCフロンティアは、国内最大級の国産パブリッククラウド「IDCFクラウド」と、首都圏や東日本・西日本で大規模データセンターを展開しています。IDCフロンティアは、「IDCFクラウド コンテナ」サービスを通じて、メタデータラボ社のような組織がコンテナ化されたアプリケーションのデプロイ、スケーリング、管理を行うのを支援するKubernetesベースのプラットフォームを提供しています。
メタデータラボ株式会社 執行役員 酒向智也氏は次のように述べています。「私たちが検討した他のデータセンターやクラウドプロバイダーはアプローチが非常に硬直的でしたが、IDCフロンティア正反対でした。IDCFクラウド コンテナによって、私たちは新しいAIサービスを展開するための、柔軟で費用対効果の高いプラットフォームを手に入れることができました」
IDCフロンティアは、「IDCFクラウド コンテナ」の基盤技術としてKubernetesを使用しています。メタデータラボや他のクライアント向けにKubernetes環境管理の複雑さを簡素化し自動化するため、IDCフロンティアはSUSEのRancher Primeを利用しています。
酒向氏は続けます。「Rancher Primeは、当社のコンテナ管理要件にまさに理想的でした。エンジニアリングコミュニティとの密接なつながりがあるにもかかわらず、日本国内でKubernetesの専門家を見つけるのは非常に困難でした。Rancher Primeを使用することで、IDCFクラウド コンテナプラットフォーム上で複数のコンテナ化環境を、シンプルなグラフィカルインターフェースを使って管理できます。操作は非常に直感的で分かりやすいため、社内に専門スキルを持つ人材を置く必要がありません」
SUSE Rancher Prime導入の効果
より高い性能を、より低いコストで
IDCFクラウド コンテナと「Rancher Prime」の活用により、メタデータラボ社は新しい「HIMIKO」プラットフォームにとって最適な環境を整えました。IDCフロンティア社の高負荷対応データセンターにシステムを展開することで、同社は高性能なCPUおよびGPUリソースへのオンデマンドアクセスを実現し、加えて「Rancher Prime」によってコンテナ化環境の管理も簡素化されました。リソース利用の最適化と運用の合理化によって、メタデータラボはインフラコストを大幅に削減し、環境管理に必要なリソースも最小限に抑えることができました。
メタデータラボ株式会社 代表取締役 本間裕二氏は次のように述べています。「IDCフロンティアのおかげで、大手クラウドプロバイダーから提示された価格よりも大幅に低い価格帯で、AIワークロードに対してハイパースケーラーレベルのパフォーマンスを達成できています。極めて重要な点として、SUSE Rancher Primeによって当社のすべてのコンテナ化環境を単一のコントロールポイントからオーケストレーションでき、これにより時間と労力を大幅に節約できています」
即戦力化までの時間短縮
SUSE Rancher Primeを活用することで、メタデータラボは「IDCFクラウド コンテナ」上で「HIMIKO」を迅速に立ち上げ、運用を開始することができました。クラスター運用、プロビジョニング、監視といった主要タスクを効率化することで、Kubernetes担当者を継続的に採用し維持する必要がなくなりました。
メタデータラボ株式会社 執行役員 酒向智也氏は振り返ります。「IDCフロンティアによる2、3回のトレーニングセッションを受けただけで、私たちはSUSE Rancher Primeを使ったコンテナ化環境の管理に、すぐに自信を持つことができました。毎週数時間を反復的な手作業に費やす必要がないため、その時間を日本のクリエイターにとってAIをより身近なものにするという私たちの目標達成に充てることができます」
必要な時に必要なサポートを受ける
メタデータラボにとって、コンテナ管理に関する問い合わせの最初の窓口はIDCフロンティアです。また、IDCフロンティアはSUSEと緊密な協力関係を構築しており、これがメタデータラボの、より複雑な問題の迅速な解決支援につながっています。
IDCフロンティア株式会社のクラウド統括本部 技術企画本部 事業推進部である藤城 拓哉氏は次のように述べています。「私たちはSUSE Rancher Primeの初期導入時から現在に至るまで、SUSEのテクニカルサポートを利用しています。開発準備段階から本番稼働に至るまで、SUSEから受けたサポートは素晴らしいものでした。SUSEチームはチケットを必要に応じて自社のエンジニアにエスカレーションしてくれますし、私たちの要求に対してもチーム一丸で対応いただいています」
メタデータラボの今後の展望は?
SUSEおよびIDCフロンティアとの協業を通じて、メタデータラボは新しい「HIMIKO」プラットフォームのローンチ準備がほぼ完了しており、今後数ヶ月以内にサービスを開始する予定です。SUSEおよびIDCフロンティアとのパートナーシップを基盤として、同社はコンテナの利用を拡大し、SUSEポートフォリオの他のソリューションも検討していくことを検討しています。