さらなるビジネス拡大を目指して基幹システムを刷新、「SAP S/4HANA」を採用して、基盤OSに実績豊富なSUSEを選択 経営/ビジネスプロセス/ITの各領域でコンサルティングサービスを提供するアビームコンサルティングでは、グローバル展開のさらなる拡大と新たなサービス提供形態に対応できる基幹システムの必要性が高まっていた。そこで2016年に現行システムの刷新を決定、SAP社の提供する次世代ERPパッケージ「SAP S/4HANA」を採用し、基盤として「SUSE Linux Enterprise Server for SAP(SLES for SAP)」、「SUSE Manager」を選択した。その背景とSUSE選定のポイントについてお話を伺った。

概要

現行の基幹システムでは、2020年に向けた中期経営計画を支えることが困難に アビームコンサルティングは、現在アジアパシフィック/米国・中南米/欧州の3拠点体制でグローバルにビジネスを展開しているが、その主な活動は、顧客企業の業務改革プロジェクトなどにコンサルタントがチームを組んで参画し、成功支援を行うというものである。競争優位性の源泉となるのは“人”そのもので、これが同社の売上を支えるビジネスモデルとなっている。

課題

そして最近では、様々な業界/業種へのサービス提供で培ったノウハウを集約し、SaaS形式で業種別ERPテンプレートや業務別アプリケーションを提供する「ABeam Cloud」というクラウドソリューションをリリースした。この動きについて、今回の基幹システム刷新プロジェクトを主導している同社 執行役員 プリンシパルでプロセス&テクノロジービジネスユニットの畠山友希氏は、次のように説明する。

「弊社では2016年に4か年の中期経営計画を立案しましたが、これはお客様とWin-Winの関係を維持しながらお互いの成長を目指す“Real Partner”戦略を軸に、さらなるビジネスの拡大を図ろうとするものです。ABeam Cloudのリリースはまさにこの一環で、この他にも成功報酬型のビジネスやITのアウトソーシングサービスなどサービスメニューが多様化し、さらにボーダレスに提供していくという大きな流れが出てきました」(畠山氏)。  しかし既存の基幹システムでは、同社の新たなビジネス活動を支えることが十分にはできなかったという。

「SUSE Managerを利用することで、オンプレミスとクラウド、さらにはLinuxとWindowsの混在環境を一元的に管理することができます。また、Linuxに詳しくない担当者でも、SUSE Managerで提示される情報により、適用すべきパッチを判断することができる。新しい基幹システムの効率的な運用管理を行う上で、SUSE Managerは無くてはならない製品だと言えます」(石田氏)。

SUSEソリューション

SAPソリューションに関する自社の知見を基に「SAP S/4HANA」を採用

当時同社が利用していた基幹システムは、2008年にWindowsベースで自社開発したもので、会計処理と人事管理にはSAPモジュールを利用していた。しかしサービスメニューを拡充し、展開する海外エリアも拡大しようとする際には、今まで以上に効率的な経営環境を構築する必要があった。

「例えば経営層がビジネス状況をモニタリングする場合には、世界の各拠点を横串で刺し、その時々の見たい切り口で柔軟にデータを加工し、直観的なビジュアルで比較検討できるような仕組みが必要です。しかしそれは現行の基幹システムでは難しかったのです。より柔軟なデータ活用ができる次世代のシステムに進化させなければなりませんでした」(畠山氏)。

そこで同社が2016年春に立ち上げたのが、基幹システム刷新プロジェクトである。最初に検討すべき事項は、また自社開発で行くか、それともパッケージを利用するかであったが、ERPパッケージ「SAP S/4HANA 1610」を採用することに決定した。この点について、情報システムユニット 情報システムグループ シニアマネージャーの鈴石庸勝氏は次のように説明する。

「弊社は、年間約300件にのぼるお客様のSAP導入プロジェクトをご支援させていただいており、SAP認定コンサルタントの数も2800名以上で国内最多です。SAPソリューションに関する知見やノウハウはまさに弊社の強みであり、それなら自社の基幹システムにもSAPパッケージを、その際には最新のSAP S/4HANAを使おうという意思決定を行いました。またパッケージの選択によって、自社開発よりも少なくとも約1年は早くリリースできるという見込みもありました」(鈴石氏)。

SAP S/4HANAは、大量/高速のデータ処理を可能にするインメモリデータベース「SAP HANA」を核とする次世代ERPパッケージで、SAPが23年ぶりにアーキテクチャを刷新した製品である。アビームコンサルティングではSAP S/4HANAのデータベースとして、最新のSAP HANA 2.0を採用した。

「日本でSAPビジネスをリードしていく企業として、まず弊社自身でSAP S/4HANAを使ってベストプラクティスを導き出し、それをお客様にご提供したいという思いもありました」(畠山氏)。

参考までに同社が基幹システムとして採用した主要なSAPモジュールはCPM、MRS、FICO、MM、PS、HCMで、この他にもSaaSのSAP FieldglassやCONCUR、SuccessFactorなどを利用している。

SUSE選択の理由は、クラウドとの親和性、サポート期間の長さ、豊富な導入実績、 SAPとのパートナーシップ

SAP S/4HANAを選択した同社が次に検討すべきテーマが、“基盤となるOSをどうするか”であった。SAP S/4HANA自体はWindowsもサポートしているが、SAP HANAはLinuxでしか動作しない。選択肢は、SUSEかRed Hatかの二択だった。その際の選定ポイントとして、情報システムユニット 情報システムグループ マネージャーの石田欣史氏は、次のように説明する。

「基幹システムの刷新に当たり、弊社はまず2016年の秋に、経営層に向けた“ABeam Digital Board Room”という経営ダッシュボードをリリースしたのですが、この基盤として既に利用していたのがSUSEでした。それというのも、先に話の出たABeam Cloudで採用していたのがSUSEであり、またABeam Cloudの基盤となるパブリッククラウドでは、SUSE Linux Enterprise Server(SLES)の最新バージョンをサポートしており、SUSEにアドバンテージがありました」(石田氏)。

またサポート期間の長さも、重要な要件の1つだったという。

「今までの基幹システムも10年近く使ってきましたが、今回新たに構築するシステムも5年、10年という長期スパンでの利用を想定したものです。その前提で考えた時に、長いライフサイクルでサポートしてもらえる製品が必要でした。この点についても、SLES for SAPはプロダクトサイクルが13年で、通常は6ヶ月間のサービスパック重複サポートが18ヶ月間あり、さらに通常サポート終了後には2年間の延長サポートを提供してくれます。こうした観点からも、SUSEは非常に信頼のおける製品でした」(石田氏)。

そして「最後の決定打になった」と石田氏が強調するのが、SAPとSUSEの強力なパートナーシップだ。

結果

「両社は共にドイツの企業ですが、SAPは社内での標準開発環境としてSUSEを使用しています。また世界のSAP HANAユーザの95%がSUSEを使用しており、SUSEのホームページでは40社以上のユーザ事例が公開されています。今後弊社がさらなるグローバル展開を図り、SAPソリューションのノウハウをデリバリーしていく際にも、ユーザの多さは非常に魅力的であり、かつ弊社の強みが十二分に発揮できる場でもあります。こうして最終的に選択したのがSUSEでした」(石田氏)。

ハイブリッド環境の効率的な運用管理には、SUSE Managerも必須の製品

基幹システムの刷新に当たり、同社ではコストシミュレーションも行った結果、本番環境と検証環境はオンプレミスに、開発環境とディザスタリカバリ環境はパブリッククラウドに、という切り分けを行った。オンプレミスとクラウドのハイブリッド環境である。ここでOS選定とはまた別の新たな課題が出てくることになる。それがハイブリッド環境でのシームレスな連携である。

「従来の基幹システムがWindowベースだったこともあり、社内にはLinuxに詳しいエンジニアがほとんどいませんでした。そんな状態で新たなLinux環境を運用していこうとした時、セキュリティパッチの当て方も分からないですし、様々にリリースされるパッチの中で、どれが脆弱性に関わる優先度の高いものかも分かりません。さらにいざ運用が始まった時には、監査上、どのユーザがどんなモジュールにアクセスしたかを把握するためにログを収集する必要がありますが、そのためにクライアント1台1台にアクセスしてログを集めてくるというのは現実的に不可能です。またパブリッククラウドでは一部でWindows環境も利用しています。こうした状況を全て含めて、効率的な運用管理を行うための仕組みが必要でした」(石田氏)。

そんな時、SUSEから紹介されたのが「SUSE Manager」であった。SUSE Managerはパッチの種類や優先度と言った情報を管理者に分かりやすく提示し、運用管理を容易にする製品である。またSUSE ManagerはWindowsの監視ツールであるMicrosoft System Center Operation Manager(SCOM)とも連携し、1台のコンソールから、Windowsを含むオンプレミス環境とクラウド環境とを一元的に監視することができる製品である。

今回のプロジェクトで獲得した知見を、今後顧客にも還元していく

同社はSAP Japanによる「SAP AWARD OF EXCELLENCE」を過去18回受賞しており、こちらも国内最多である。また 2016年には最も優秀なプロジェクトを表彰する「プロジェクト・オブ・ザ・イヤー」も受賞している。

「会社や人が成長するのと同様に、システムも将来に向けて成長できるものを作りたいと考えています。それが経営効率のアップに繋がり、お客様に弊社の知見をお伝えすることにも繋がっていきます。今回SAP S/4HANAと SLES for SAP、SUSE Managerを採用して構築した基幹システムのノウハウも、今後お客様に還元させていただきたいと思います」(畠山氏)。

アビームコンサルティングでは、2016年秋に経営者向けにABeam Digital Board Roomをリリースし、2017年夏前には基幹システムの一部機能である勤怠管理と経費精算を国内の従業員向けに、そして2018年の年明けには全てのモジュールを全世界の拠点で一斉にリリースする予定である。

「ABeam Digital Board Roomの導入により、以前に比べ色々な切り口で経営情報を見ることができるようになりました。これによって経営層からは、毎日のように“こんな切り口でデータを見たい”という要望が寄せられてきます。今回の基幹システムが全面カットオーバーすれば、SAP HANAによって大量データの分析もリアルタイムで実現できるようになり、より迅速な意思決定を下すことが可能となり、さらには自分自身で切り口の変更やドリルダウンもできるようになります」(畠山氏)。